フルスのルーツとオリジナルのフルス
フルスは中国南部の雲南省からタイ、ミャンマー北部の少数民族、タイ族、ダアン族、ジンポー族、アチャン族、ワ族などで用いられてきました。瓢箪にはめ込まれる竹の本数は1から4本で、主管(音孔が7つ)でソラシドレミソラの8音を演奏し、両側の通奏管で和音(ミとラ)を演奏します。通奏管を塞ぎ主管だけの演奏も可能です。多数の竹をはめ込んだ日本の笙の原形の様な楽器もありこちらはフルション(胡芦笙)と呼ばれます
フルスの歴史
これらの少数民族では歌・演奏や舞踊が身近に親しまれ若い男女が集まり歌をかけあう歌垣が今も残っています。フルスは若い男性が女性に愛を告白するために使われ、夜、意中の女性の家の前でフルスを吹き女性は口琴や機織りのリズムで答えるという習慣もありました。なぜフルスが女性に想いを伝える楽器となったか、その美しい伝承は南省幫蓋村に壁画として残されています。このフルスに魅了され曲の編纂と楽器の改良、演奏技術の向上に力を注いだのが近代フルスの父哏徳全(1958―2008)です。彼は国内外で精力的に演奏会を開きオーケストラとの共演などを通じてフルスを素朴な民族楽器から世界に通用する楽器に引き上げました。現在、中国では小学校の器楽にフルスを取り入れるところもあり海外でも愛好者が増えています。
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    九龍吟9孔フルスへの道のり
    哏徳全から直接奏法と製作法を学んだ彭超は更なる活躍が期待される年齢でこの世を去った師を継承しさらにフルスを発展させようと努力していますが同時に伝統的な味わいを残すよう努めています。サックスのようなキーとタンポをつければ演奏は容易ですが伝統的なポルタメントは演奏できなくなり音孔数を増やせば音域は拡大しますがフルスの魅力である繊細で美しい音が損なわれます。研究と試行錯誤の結果9孔が最良との結論に達し九龍吟9孔フルスが完成しました。彼はA調の音が最も美しいと言います。あまり使われる調性ではありませんが独奏用として手にする価値はあるはずです。
フルスの魅力
フルスはその深く味わいのある音と流麗なメロディが魅力です。演奏が簡単で手軽に楽しめる一方奥深く繊細な表現が可能でなぜこの楽器が愛を伝えるという感動的な目的に使われてきたかがわかります。ぜひ楽器誕生の美しい伝承を知っていただき、そんな美しい出自を持つ楽器のファンになっていただきたいと思います。
9孔フルスの構造・名称
10孔フルスの構造・名称